要点まとめ
- 錆止め塗料は、上塗りの下に塗って鉄を守る「下塗り」の塗料です。塗る素材と、屋外か屋内かで種類を選びます。
- 国の仕様書では、屋外の鉄部の錆止めはJIS K 5674 の1種(溶剤系)、水性の2種は屋内向け、トタンなど亜鉛めっきの面には変性エポキシ樹脂の錆止めを使い分けています。
- 塗り替えは、ケレン(サビと傷んだ塗膜を落とす)→ 鉄が出た所に錆止め → 全面に錆止め → 上塗りの順です。ケレンを省くと、塗膜の下でサビが進みます。
- 気温5℃以下・湿度85%以上では塗りません。国のガイドライン(マンション向け)の鉄部の塗り替えの周期の例は5〜7年で、外壁(12〜15年)より短めです。
錆止め塗料の役目:上塗りの下で鉄を守る
鉄は、水と酸素にふれるとサビます。錆止め塗料は、鉄の面に直接塗って、上塗りの塗料と一緒にサビの原因から鉄を守る下塗りの塗料です。 上塗りの塗料だけを鉄に塗るのではなく、錆止めを先に塗るのが鉄部の塗装の基本です。
錆止め塗料というと赤茶色を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、同じ製品でも色が選べます。たとえば日本ペイントの「速乾PZヘルゴンエコ」は、 赤さび色・さび色・ホワイト・グレー・ダークグレーがあります。色で選ぶより、まず次の章の「種類」を選び、その中で上塗りに合う色を選びます。
錆止め塗料の種類(国の仕様書の分け方)
国土交通省の「公共建築工事標準仕様書」と「公共建築改修工事標準仕様書」(どちらも令和7年版)は、鉄の面と亜鉛めっきの面に分けて、錆止め塗料の種類を決めています。 JIS K 5674 は名前のとおり「鉛・クロムフリー」のさび止めペイントの規格で、たとえば大日本塗料の製品資料は「鉛、クロム等の有害な重金属を配合しておらず」としています。
一般的な錆止め(溶剤系)
規格:JIS K 5674 鉛・クロムフリーさび止めペイント 1種 / 使う所:鉄の面・屋外と屋内
国の仕様書で、屋外の鉄部の下塗りや「錆止め塗装のまま」で使う種類。メーカーの製品には、手すり・鉄骨・架台などの下塗りを用途とするものがあります。シンナーで薄める塗料で、塗料用シンナーで薄める「弱溶剤系」の製品もあります。
水性の錆止め(水系)
規格:JIS K 5674 2種/JASS 18 M-111 水系さび止めペイント / 使う所:鉄の面・主に屋内
水で薄める塗料です。国の仕様書では屋内に使う種類とされています。たとえば日本ペイントの「水性ハイポンプライマー」は「水性・低臭」で、「建築物内部および準外部」の鉄面や古い塗膜の面に使うものとしています。
変性エポキシ樹脂の錆止め
規格:JASS 18 M-109 変性エポキシ樹脂プライマー/JPMS 28 一液形変性エポキシ樹脂さび止めペイント / 使う所:亜鉛めっきの面、塗り替え
トタンなど亜鉛めっきの鋼板や鋼製の建具に使う種類で、国の仕様書では屋外・屋内に使えます。耐候性塗料で仕上げる塗り替えで、古い塗膜を残す(下地調整がRB・RC種の)場合の錆止めにも指定されています。
ジンクリッチプライマー・構造物用さび止め
規格:JIS K 5552 ジンクリッチプライマー/JIS K 5551 構造物用さび止めペイント / 使う所:耐候性塗料で仕上げる鉄骨
鋼構造物用の耐候性塗料(JIS K 5659)で仕上げる場合の組み合わせです。国の仕様書では、新しい鉄骨や、古い塗膜とサビを全面に落とした鉄部に、1回目をジンクリッチプライマー、2・3回目を構造物用さび止めペイントで塗ります。
※ JIS K 5674 は「1種は溶剤系、2種は水系」です(国の仕様書の注記)。JASS は日本建築学会、JPMS は日本塗料工業会の規格です。 仕様書は1回に塗る量と厚さも決めていて、たとえば JIS K 5674 の1種は1㎡あたり0.10kg、乾いた膜の厚さ30μmです。薄く塗り延ばすと、この厚さに届きません。
錆止め塗料の選び方:何に・どこに・上に何を塗るか
① 塗る素材を確かめる(鉄か、亜鉛めっきか)
黒っぽい鉄やサビた鉄には、鉄用の錆止め(JIS K 5674 など)を使います。トタンや溶融亜鉛めっきの面は、国の仕様書では変性エポキシ樹脂の錆止めを使う、別の扱いです。 製品によっては、鉄のほかにアルミ・亜鉛めっき・ステンレスに塗れるものもあります(たとえば日本ペイントの「水性ハイポンプライマー」)。缶やカタログの「適用素材」の欄で確かめます。
② 屋外か、屋内か
国の仕様書では、溶剤系の JIS K 5674 1種は屋外と屋内、水系の2種は屋内に使う種類です。雨や雪が当たる手すり・鉄骨階段・フェンスは屋外の扱いです。 屋内でにおいを抑えたい場所では、水性(水系)の錆止めも選べます。
③ 上塗りに合わせる
国の仕様書は、上塗りの種類ごとに錆止めの組み合わせを決めています。たとえば合成樹脂調合ペイントで仕上げるならJIS K 5674 1種、 鋼構造物用の耐候性塗料で仕上げるならジンクリッチプライマーや変性エポキシ樹脂プライマーです。上塗りの塗料のメーカーが指定する下塗りを使うのが確実です。 上塗りの塗料の違いはシリコン塗料の耐用年数と単価の記事にまとめています。
鉄部の塗り替えの手順:ケレンから上塗りまで
サビと傷んだ塗膜を落として、塗料が密着する面をつくる作業を「ケレン」(仕様書では下地調整)といいます。 国の改修工事の仕様書は、鉄の面の下地調整を3つに分けています(特に指定がなければRB種)。
RA種:全部落とす
ディスクサンダー・スクレーパーなどで、古い塗膜とサビを全面除去します。
RB種:傷んだ所を落とし、しっかりした塗膜は残す
劣化してもろくなった部分とサビを除去し、まだ密着している塗膜(活膜)は残します。
RC種:汚れを落として表面を整える
古い塗膜はそのままで、汚れや付着物を落とし、細かい紙やすりで表面を整えます。
塗装会社の見積書では、ケレンの程度を「1種」「3種」のように数字で書くこともあります。たとえば国の土木の仕様書は、いちばん念入りな「素地調整程度1種」を、 塗膜・黒皮・サビなどを完全に除去して鋼の肌を出すもの(除錆の程度は ISO 規格の Sa2 1/2)としています。数字や記号が「全面か、傷んだ所だけか」「何の道具で落とすか」を、見積もりの段階で確かめてください。
ケレン(下地調整)
サビと傷んだ塗膜を落とし、汚れと油分をふき取ります。
錆止め1回目(鉄が出た所だけ)
ケレンで鉄の肌が出た部分に、錆止めを塗ります。
紙やすりで全面を平らに
乾いたら、全面を紙やすり(P120〜180)で平らにします。
錆止め2回目(全面)
錆止めを全面に塗ります。
上塗り
上塗りの塗料で仕上げ、色とつやを整え、錆止めを紫外線や雨から守ります。
※ 国の改修工事の仕様書の、塗り替えの錆止め(表7.4.3 のC種)の工程です。新しい鉄骨でも、錆止めは2回塗るのが仕様書の決まりです。
塗り重ねの時間と、塗れる時期
錆止めの上に次の塗料を塗るまでの時間は、メーカーが製品ごとに「〇時間以上」「〇日以内」の幅で決めています(塗り重ね乾燥)。早すぎても、空けすぎても、この幅から外れます。
| 製品(種類) | 5〜10℃ | 23℃ |
|---|---|---|
| 速乾PZヘルゴンエコ(JIS K 5674 1種・弱溶剤系) | 24時間以上1か月以内 | 16時間以上1か月以内 |
| 水性ハイポンプライマー(JIS K 5674 2種・水系) | 5時間以上7日以内 | 4時間以上7日以内 |
寒いほど乾くのに時間がかかります。国の仕様書は「気温が5℃以下、湿度が85%以上、結露等で塗料の乾燥に不適当な場合は、塗装を行わない」としています (暖める・換気するなどを適切に行う場合は除く)。札幌で朝晩も5℃を上回りやすいのは5月から10月で、月ごとの気温はシリコン塗料の記事の「北海道で塗れる時期」にまとめています。秋にサビを見つけたら、雪が降る前に状態を確かめておき、本格的な塗り替えは塗れる時期に行います。
塗り直しの目安:鉄部は5〜7年
国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」(分譲マンション向け・令和6年6月改定)は、開放廊下・階段やバルコニーの手すり、屋外の鉄骨階段、フェンスなど、 雨の掛かる鉄部の修繕周期の例を「塗替 5~7年」とし、修繕の方法を「ケレン・錆止め・塗替」としています。外壁の塗り替え(12〜15年)より短い周期です。
塗り替えを考えたいサイン
- 塗膜の上に、点々と茶色いサビが出ている
- 塗膜がふくれている・はがれている(その下でサビが進んでいることがあります)
- 床や壁にサビ垂れの跡がある
- 塗り替えたのに、すぐにまたサビが出てくる
- 雪や、道路に撒かれる凍結防止剤の塩分が付きやすい場所にある
サビを落としきれない鉄部は
一般的な錆止め塗装は、サビをしっかり落としてから塗ることが前提です。立体駐車場のパレットや鉄骨階段のように形が複雑で、サビを落としきるのが難しい所では、 サビの奥まで浸透して封じ込める下塗りを使う方法もあります。北海工務店が行っているバリュー工法の防錆塗装は鉄部の防錆塗装・サビ止めのページ、腐食して穴があいた手すりや鉄扉の補修は手すり・鉄扉の腐食補修のページでご紹介しています。
手すり(1mあたり)や鉄骨階段(1か所あたり)の塗装の費用の目安は、シリコン塗料の記事の「鉄部の塗装」に施工会社の公開価格をまとめています。錆止め塗装だけの1㎡あたりの単価は、施工会社が自社の価格として公開しているものが3社にそろわなかったので、ここでは載せていません。
よくある質問
Q. 錆止めだけ塗って、上塗りをしなくてもいいですか?
国の仕様書には「錆止め塗装のままとする場合」の決まり(JIS K 5674 の1種を使う)もあります。ただ、マンション向けの国のガイドラインが鉄部の修繕として想定しているのは 「ケレン・錆止め・塗替」で、上塗りまで含めた工程です。雨や雪の当たる屋外の鉄部は、上塗りで錆止めを守ります。
Q. トタンや亜鉛めっきの鉄部にも、同じ錆止めを塗っていいですか?
国の仕様書では、亜鉛めっきの面は鉄の面とは別に、変性エポキシ樹脂の錆止めを使うよう分けています。亜鉛めっきに塗れると書かれた製品か、缶の「適用素材」で確かめてください。 金属の外壁については金属サイディングの価格・耐用年数の記事もご覧ください。
Q. 冬に錆止めを塗ってもいいですか?
国の仕様書は、気温5℃以下・湿度85%以上・結露などで乾燥に向かないときは塗装しないとしています。札幌の冬の屋外は、この条件に当たる日がほとんどです。 寒いと塗り重ねまでの時間も長くなります(5〜10℃で24時間以上とする製品の例があります)。
Q. サビの上から、そのまま錆止めを塗ってもいいですか?
浮いたサビや傷んだ塗膜の上に塗ると、密着せず、塗膜の下でサビが進んでふくれやはがれの原因になります。国の仕様書も、塗る前に下地調整(ケレン)でサビや傷んだ塗膜を落とすことを決めています。 サビを落としきるのが難しい所は、上の「サビを落としきれない鉄部は」をご覧ください。

