築年数だけでは決められません
「築30年を超えたら建て替え」という言い方をよく聞きますが、 実際には同じ築年数でも状態がまったく違います。 雨漏りを放置した築25年の家より、手入れされた築45年の家のほうが健全なことは珍しくありません。
判断するなら、年数ではなく下の5つを見てください。
判断する5つの目安
基礎に、幅の大きいひび割れや傾きがあるか
基礎は、後から作り直すのがいちばん高くつく部分です。幅の大きいひび割れ、鉄筋が見えている、建物が明らかに傾いている——このどれかがあると、リフォームで直しても費用が伸びます。逆に、基礎が健全なら、上物はかなり自由に作り替えられます。
柱・梁・土台に腐りやシロアリの被害があるか
一部なら交換して直せます。ただし、水回りの下や、雨漏りが長く続いた場所は、壁を開けてみないと範囲が分かりません。「開けてから決める」ことになる部分なので、見積もりの段階で幅を持たせておく必要があります。
間取りを大きく変えたいか
壁を抜きたい、階段の位置を変えたい、水回りを別の階へ移したい——このあたりは、構造上抜けない柱や壁があると実現できません。逆に、いまの間取りにおおむね不満が無く、寒さと古さが問題なのであれば、リフォームで十分に解決できます。
断熱をどこまで上げたいか
壁の中まで断熱をやり直すとなると、内側か外側のどちらかを全部剥がすことになります。ここまでやると費用が建て替えに近づいてくるため、判断が分かれるところです。窓と天井だけで満足できる寒さなら、リフォームのほうが確実に安く済みます。
この家に、あと何年住むか
10年なのか、30年なのか、次の世代に渡すのかで答えが変わります。短ければ、効く場所だけ直すほうが合理的です。長く住む、あるいは受け継ぐのであれば、構造からやり直す価値が出てきます。技術の話より先に、ここを決めていただくのが早道です。
北海道ならではの、もう一つの視点
本州ではあまり出てこない要素が、こちらにはあります。
仮住まいの時期
建て替えは、解体から完成まで住む場所が必要になります。 北海道では冬に基礎工事が止まるため、着工の時期を外すと工期が半年単位でずれます。 リフォームなら、住みながら進められる範囲があります。
除排雪と敷地の使い方
建て替えなら、雪の落ちる向き、置き場、車の出し入れまで含めて配置をやり直せます。 毎年の除雪がつらい、という理由が建て替えを選ぶ決め手になることもあります。
暖房費の差は、年数で積み上がります
寒冷地では暖房費の差が大きいため、断熱にかけた費用が長い年数で戻ってきます。 「初期費用が安いほう」だけで比べると、この部分が見えません。
費用を比べるときに見落としやすい項目
建て替えとリフォームを比べるとき、工事本体の金額だけを並べると判断を誤りやすくなります。 それぞれに、本体の見積もりの外でかかる費用があります。
建て替えでかかる、本体以外の費用
- 今の家の解体と、廃材の処分
- 仮住まいの家賃と、2回分の引っ越し
- 地盤の調査と、必要な場合の地盤改良
- 建物の登記などの手続き
- 駐車場や塀など、外まわりのやり直し
リフォームで見込んでおきたい費用
- 壁や床を開けてから分かる、土台や配管の補修(予備費として幅を持たせる)
- 工事を何回にも分けた場合に、そのたびにかかる足場や養生の費用
- 住みながら工事する場合の、荷物の移動や一時的な保管
リフォームを選ぶ場合は、効く場所から順番に直していくことになります。 断熱の優先順位は北海道の断熱リフォームの記事、屋根の傷み方は無落雪屋根のメンテナンスの記事が参考になります。
建て替えができない・小さくなる土地もあります
建て替えを考えるときは、建物より先に「今の決まりで、この土地に同じ家が建つか」を確かめる必要があります。
道路に接している長さが足りない
建築基準法では、建物の敷地は原則として幅4m以上の道路に2m以上接していなければなりません。 これを満たさない土地は、原則として建て替えができません。
前の道路が狭い
前の道路の幅が4mに満たない場合、建て替えのときに敷地の一部を道路として下げる(セットバック)必要があり、 建てられる面積が小さくなります。
建てた当時より決まりが厳しくなっている
建ぺい率・容積率や高さの制限が、建てた当時より厳しくなっている地域では、同じ大きさの家を建て直せないことがあります。
こうした土地では、今の家を活かすリフォームのほうが、広さを保てることがあります。 土地の条件は、札幌市の窓口や公式ページで最新の内容を確認してください。
もう一つの選択肢:構造を残して全面的に改修する
建て替えと部分的なリフォームの中間に、柱・梁・基礎などの構造を残して、内装・設備・断熱をまとめてやり直す全面改修があります。 構造上抜けない柱や壁は残りますが、部分的なリフォームより間取りの自由度が上がり、解体する量は建て替えより少なく済みます。
基礎と構造が健全であることが前提です。1981年(昭和56年)5月以前の古い耐震基準で建てられた住宅では、 壁を開けるこの機会に耐震診断と補強をあわせて行うのが合理的です。 耐震改修や断熱改修に使える支援制度は、札幌のリフォームで使える補助金の記事で探し方をまとめています。
決める前に、まず状態を見せてください
上の5つのうち、1・2はご自身では判断が難しい部分です。 床下と小屋裏を見て、基礎と構造の状態を確かめるところから始めます。
当社では、住宅の健康診断としてこの調査を行っています。「見た結果、リフォームでは無理だと思います」とお伝えすることもあります。そのほうが、後から後悔しないためです。
よくある質問
Q. 築40年を超えた家でも、リフォームで住み続けられますか?
年数だけでは決まりません。基礎と構造が健全で、上の5つの目安で建て替え寄りの項目が少なければ、リフォームで十分に住み続けられる家は多くあります。 まず床下と小屋裏を見て、基礎と構造の状態を確かめることから始めます。
Q. どちらにするか迷っているうちに、先に直したほうがいい所はありますか?
雨漏りや水漏れは、どちらを選ぶにしても先に止めてください。放っておくと土台や柱が傷み、 リフォームで済んだはずの家が建て替え寄りになってしまうことがあります。

